CompassPoint (コンパスポイント) ~若手社会人の情熱の魔法瓶~

What we do 活動内容

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Compass Point 第17回勉強会は、クルミドコーヒー店主の影山知明さんをお招きし、
「ビジネス・マインドとソーシャル・ハート 」と題して開催しました。

参加者のみんながとってもいい刺激を受けた言葉の数々をここに記します!!

■マッキンゼー時代

パブリックなところで成果を出すためにはまずビジネススキルを磨こうと考えて1997年にマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社しました。

しかし、コンサルティング業は「客観的」であることが求められ、自分自身が何をやりたいのか、何を好きなのかを出すことができない業界です。また、仕事相手である大企業の経営企画部長などにビジネスに対する主体性を感じられずだんだんつまらなくなっていきました。

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■ウィルキャピタルから人生の分岐点へ

そして2000年に、ウィルキャピタルマネジメント株式会社の設立に参画しました。リスクを抱えながら前に進もうとする人を応援するということにやりがいを感じ、また、投資判断の中で「自分が何をしたいのか」ということを考える機会をもつことができました。

しかし、次第にベンチャーキャピタルの自己矛盾を感じるようになりました。ベンチャーキャピタルは起業家の志を応援したい反面で、利益を要求せざるを得ません。そのため、経営者がもっていた当初の創業の動機が利益追求によってどこかに行ってしまうということを何度も見たのです。

結局、コンサルタントもベンチャーキャピタルもサポーターにすぎないし、世の中を見ても、社会起業家の支援者は多いが実際のプレーヤーは少ないです。それに問題を感じるようになりました。そして2009年4月、セキュリテ(CP14の記事を参照)・クルミドコーヒー・コレクティブハウジングなどに取り組んでいくこととなり、人生の分岐点を迎えます。

■コレクティブハウジング社について

個々が独立した住居を持ちながらお隣と緩やかに関わっていく新しいスタイルの住居です。北欧では40年くらいの歴史をもっています。「コレクティブ」とは、「自立した個人による、共同体への貢献」ということができます。サッカー日本代表でいえば前者ばかりだったのがジーコで、後者ばかりだったのがトゥルシエですね。これが両方必要ということです。

2008年11月からこのNPOの代表理事を務めていますが、経営もコレクティブでそれぞれの理事がフラットな関係において力を発揮しています。ひとつの組織論を試しているようなものです。

コレクティブハウジング社のホームページ

■クルミドコーヒーへの道

老朽化した生家と自分が育った西国分寺の町をチャレンジの拠点にしたいと思いました。そこでまず、マージュ西国分寺という共同住宅を企画しました。

どんな社会問題でも家やそれを含む地域社会の問題に還元される。だから、家や住環境の可能性を追求しようと思ったのです。過去と切り離されてしまっているマンションなどと異なり、自分が育ったという過去やその町にあるものとのつながりを大事にしていこうというコンセプトで進めていきました。

そして、マージュ西国分寺には住人同士のコモンスペースを設けたのですが、それとは別に1階にバブリックコモンスペースとしてカフェクルミドコーヒーをつくることにしました。これは、昔のお座敷や縁側が果たしていた機能をそこにもたせ、出会いが生まれる空間をつくるということです。普通にマーケットプランニングをしていたなら、飲み屋をつくろう!ということになってしまったと思いますが、どういう町にしたいかというところから逆算してカフェにすることにしました。

すごく衝撃を受けたのが、カフェ・マメヒコのオーナー井川さん作成の企画書(演出覚書)が全部手書きだったこと。コンサル時代はパワーポイントで何でも作れたが、手書きの企画書がもつ温かみに感心しました。客単価等の経済性の話の前にこのイメージ画があったことで、やりたかったことからブレずに企画を進められたんです。

Easy come, easy goという言葉があるとおり簡単に得たお客さんはすぐになくしてしまうものです。だから、ビラ配りで集客するのではなく、地道に時間をかけて関係を作り、植物が根を張るようにしてお客さんと繋がっていく方法をとりました。そうすることによって不景気だからといって客足が遠のかない関係性が築けるはずだと思うんです。

※ここで、クルミドコーヒーの吉間さんにお話ししていただきました。デザインの勉強をしていたのでそれを活かせると思って関わったそうで、「子どもに本物と出会ってもらいつつ、大人も楽しむという空間をつくっていきたい」とおっしゃっていました。

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■クルミドコーヒーから学んでいること

まず、「ゆっくりいそげ (festina lente)」、つまり、かけるべき手間をかけるということです。資金を5年で回収と言われると当初の意思に対するいろんな「ウソ」が必要になってしまうから、自分達の労力で改修等をして資金不足を補いました。手間をかけるからこそできる空間がある。10年20年かけていいと思ってるからこういうカフェができるんです。

また、「空間が行動を誘発する」ということも学びました。空間の質によって会話の質も集まる人も変わってくるんですね。コーヒー1杯で650円と少し高めの料金設定ですが、それを払うからこそ作り出せる空間があることも次第に分かってもらえるのではないでしょうか。

■影山さんの人生観

私の人生訓は「犬も歩けば棒に当たる」です。つまり、人生を演繹的にデザインすることはできず、最終的にはノリとか縁で決まるものということです。一歩歩き始めてみることで新たな出会い(縁)が生まれ道が開けていく。そして振り返ってみて、「自分はこういうものを求めてきたのか」と分かるものなんです。

だからこそ、明日のために今日を犠牲にするのではなく、今できることを精一杯やってくこと、歩き続けることに力を注ぐことが大切です。

■質疑応答

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Q. 影山さんがアクションをし続け「棒に当たる」ためにどのようなことを考えていますか。

A. 大事にしていることが2つあります。ひとつは、いかに固有名詞としての自分で仕事ができるかです。マッキンゼーを辞めたとき付き合いがなくなった人が大勢いたんですが、それは嫌だなと。単に葬式が惨めになるのは嫌だということなんですが(笑)。もうひとつは、自分なりの旗を立てるということです。はじめて会った人にいつも「とうもろこしと天津甘栗が好き」というのですが、これによって天津甘栗を見て私のことを思い出してくれたりして印象に残るんです。

Q. コレクティブハウジングは北欧由来の取り組みということですが、日本においてチャレンジングな点はありますか。

A. 日本はいい関係を作り上げていく成功体験があまりないんじゃないかという気がします。家族でも企業でも。ただ、1回そういう体験をして身につけさえすればけっこううまくいくのだと思います。

Q. 社会企業の当事者が少なくサポーターばかりというお話がありましたが、どうやったら当事者が増えるでしょうか。また、当事者になられた影山さんからはサポーターはどのように見えますか。

A. 起業というとどうしてもメシが食べられるかの問題になるので、別の仕事で金を稼げるといいですよね。稼ぎ方はあるはずですし。一方で、助成金を受けるという手段もありますが、受け取れるのは活動の後という制度的課題がありますね。学校を出ていきなり社会的起業をするという人もいますが、皆がスキルが高いわけではありません。やはり、企業で働いてスキルを付けた人がやっていくのがいいと思います。サボーターについてですが、サポーターとしてのプロフェッショナリティはもっていてほしいです。当事者としては「手伝えることがあったらやるよ!」という姿勢はやっかいです。同じ当事者としての意識を持って、自分にできる役割を提示してくれるのがありがたいですね。

Q. 影山さんはいくつもの仕事を掛け持っていらっしゃいますが、どのように時間をやりくりしているのですか。

A. 自分は寝なきゃダメなタイプです。だけど、僕がいなくても事業が回るという状況ができていることで掛け持ちができています。

Q. 新しい事業に取り組まれるときどのような意思・覚悟で取り組まれるのですか。

A. 実は意思というのではなく、たまたま始めたということが多いです。ただ、そこに踏み込んだときどれくらい大変なのかという想像はするようにしています。ちなみに、リーダーは「ほどよく頼りない」くらいがちょうどいいんですよ。周りが手を差し伸べたくなるみたいなので(笑)。

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■最後に影山さんからのメッセージ

僕が好きな言葉が2つあります。

ひとつは「鳥の目と虫の目」。俯瞰的な大きな視点とミクロな部分を見る視点の両方を併せ持つことが大切です。

もうひとつは「起業より修行」。今焦って何か大きなことをしようと考えなくてよいから、まず自分のいる場所でしっかりスキルを身につけることです。そこで何かひとつでも"必殺技"をもてるようになれば将来それがきっと活きますから。

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影山さん、心に響くメッセージをどうもありがとうございました!