コンパスポイント第12回の報告です。
今回は『~強い想いと頭脳で画期的な仕組みを展開する社会起業家~』をテーマに、Table For Two International(以下、TFT)事務局長の小暮真久さんをお呼びして講演会&ワークショップを開催しました。
2009年開始早々、CP開始以来過去最高に近い満足度を事後アンケートで叩き出したCP12。
最初は若干お疲れ(二日酔い?!)気味だった講師の小暮さんも、最後はかなり大興奮と、
コンパスポイントとしてもかなり意義深い勉強会になりました。
そんな勉強会の様子を、簡単にご報告します。
【小暮さんのお話】
1. TFTのアフリカ現地での活動の様子
TFTが支援をしている国の1つ、マラウィの村の写真を見ながら小暮さん個人の想いを語って下さいました。
・「栄養」という概念が存在せず、ビタミンという単語が通じない世界
・人々が調理をしていない食べ物(果実など)を中心に食事をし、食事=腹を満たせばOK、という状態
→「給食を提供する価値」がこの地域にあると確信
→「学校に行くと、温かい食事が提供される」⇒教育の活性化⇒英語を学習する⇒現金収入増&村の活性化⇒子ども達のヒーローになれる(希望がうまれ活力になる)
⇒給食を提供することで、負の連鎖を断ち切り、人々に希望を与えられる原動力になる
2. TFTのコンセプト/問題意識
・『同じ地球上に飢餓になる人とメタボな人がいるのはおかしい』という問題意識が根源にある
・そこから出来上がったビジネスモデルが、この"20円モデル"。この先進国での20円が、アフリカでは食費と人件費になる。
・TFTメニューは2割カロリー減。最初はちょっと辛くても、1週間ぐらいで慣れる。
・TFTでは、情報開示を特に重点的・意識的に行っている(3ヶ月に一度、かわら版を発行) → TFTに携わる前、小暮さん自身が寄付や支援に対して怪しいと思っていたため(+NPOは信頼が命。だからサポーターを大切にする)
3. TFTの成長過程
・食堂がある所を中心に展開(効率がよかったため)
→しかしScale upするためには、それだけでは力不足
・そこでスリーエフ(コンビニ)で展開し、成功体験を得る
→顧客は商品を買って「あ、失敗したな...」と思うのを嫌がるため、既存商品でマージンを取る仕組みで展開。それがブランド向上にもつながり、成功。
・企業中心に積極化し、120団体がサポートするようにまで成長。業界の壁を越えて成長を続けている。
・TFT UA(University Association)など大学生からの支援も増えている
4. 今後のTFT
① 事業ラインの拡大
② 海外展開は、フルコミット出来る人材が必要なためスローダウン
③ メディアへの露出を増やし、ブランド強化
⇒「日本発」のムーブメントであることをもっとアピールして、もっと日本人が盛り上げていきたい
5. Who is 小暮さん?
自分が大切にしている価値観は何で、どういう自分になりたくてキャリアの判断をしてきたかを、赤裸々に語って下さいました。大切にされている価値観は、大学院時代の人工心臓の研究から学んだ「人に感謝される喜び」。そういう経験をして以来、人生の軸はこれになったそうです。その後、ではどうやったらより多くの人に提供できるか?と思い、プロデューサー的能力が必要だと気付き、マッキンゼーの門を叩いたそうです。その後、能力は習得したが実業経験がないが故に説得力に欠けると感じ、松竹へ転職。事業をまわす経験は出来たものの、自分は裕福な人々にサービスを提供しているだけで、社会に貢献していないと感じ始めたそうです。そんな悩んでいる時に、ソーシャルセクターについて知る機会を得て、新たなスタートを切り、今に至っているそうです。詳しくは著書「『20円』で世界をつなぐ仕事」で!
6. 質疑応答
Q1)意思をもった人からは、20円以上もらってもいいのでは?
A) TFTとして大切にしているのは、「意識をしてもらう」ということ。だから「1食=1食」の20円を大切にしている。理解されずに食べられてしまうのは、企業の担当者の情熱に火を点けられていないから、と思っている。
Q2)寄付金は増えているが、その使い道(出口)はどうなっているか?
A)「インフラがある/パートナーがいある/貧困問題が存在」を条件に供給先を選定している。事業計画を考慮しながらになるが、提供する国の数を増やしていくのがマーケティングの観点からはいいのでは、と考えている。
Q3) 企業担当者との話し方
A) 担当者にはデータ実績を見せて、善意に火をつける。学校とかは情熱で口説き、官公庁は事務手続きを丁寧に行うことで口説く。相手によって攻め方/口説き方は変えている。
また全て自分でやろうとせず、他力本願(他人に頼れるところは頼り、より大きな規模で行う)であることも大事にしている。
Q4) どういう団体と組んでいくか?
A)国連はMust.なぜなら、国連と組まないと信頼を獲得できない。
Q5)コンサル時代と今の違いは何か?
A)今は、この逃げられないという感覚が大変だけど、一方で全てをかけられるという楽しさ・醍醐味もある。また、"For Two"という概念が広がっていっているのが嬉しい。
【ワークショップ】
事前に小暮さんとご相談をした上で設定したテーマについて、ワークショップを行いました。その結果、面白いアイディアが溢れ出てきて、とても熱気に満ちたディスカッションが各グループで行われました。
小暮さんは、各グループのプレゼンを真剣に聞いて下さり、丁寧に1つずつコメントをして下さいました。
1.TFTが5年後どうなっていたら面白いか?
アメリカの靴メーカーやipodなど様々なところで活動があるので、他のグループとの連携を進める。(横のつながり)
20円という気付かないまま払っている→これを応用できないか。
20円パスも使ったら途上国のインフラ整備に使われる。居酒屋でも・・
日本の小学生との比較→日本の農村とつなげてそことのTable for Two をする。
講評:
For Two→業界を問わないキャンペーンを。
給食のおばさんからのメール→吐くほど残す子どもたち・・→どうにかできないか。
Ex.聖心Internationalでの実施。子供から親への波及。大学連合の活用【子供に教える】
2-1.
Real ベース
-PRの対象先:アースデイの社会系のイベント、調理士学校、欧米の航空会社、旅行会社とのタイアップ、自給率アップの関係で政府との連携
-スタンプ方式→たまったら何かもらえる、24時間テレビ、スポーツジム(My fat for you)、お菓子連携
Webベース
―会員制のWebのポイントの活用【例:楽天】
講評:
-ライブコンサートとの連携(CDの売上↓・ライブのチケットの売り上げ↑。芸能事務所の関心低さ)
-メタボランティア
-ピンクリボンやFair Tradeのようなブランドへ(いいものという認識)
2-2.
NGOのメニュー→おいしいことの認知度を広げる(Cook pat等のサイトの活用、Table For Twoキャンペーンでヘルシーメニューランキング)
裾野を広げていく(TFTのランチボックスをつくる)
ホテルを一泊泊まると途上国の家の屋根ができる
講評:
-メニューによって売れると売れないあり(がまんがあるとやらない、楽しくないとやれない)→ポーラ化粧品、食堂からのメニュー依頼あり(揚げ物ばかり)
-ランチボックスもデザイン化されている→メーカーを探しているところ
3-1.海外展開
-現地で関わるStakeholder
子どもたち、保護者、ボランティア、住民組織、NGO、国際機関、省庁、現地で事業をする日本企業→現地の住民組織、子どもたちを巻き込んでいく、現地のKey Personをみつける、現地の日本人(ボランティア)との連携(100人単位でいるため)
-現地で展開する際の課題やリスク
災害、現地のローカルリソース少ない(Full コミット)、当事者意識の醸成
講評:
-情報がないので一番難しい・・・
-若者や興味を持っている人たちを現場に連れて行きたい(小暮さんの夢)→開発のプロだけでなく外の人を巻き込んでアイデアを出し合っていく
3-2.
①アフリカと企業をつなげる→このリンクの情報を提供する
②現地でどのような形で提供ができるか→トップダウン、上からの政界や財界を巻き込んでいく(日本の政界だけでなく先方の政界も巻き込んで)。途上国内でのTFTも。
お金20円を届けるだけでなく、きちんと届けているということを伝える、人を現場に連れて行く、栄養管理、地産地消、日本の知識や技術や若者の情熱を伝えることもあれば。
講評:
-農業を今年やる予定。千葉の畑を借りている(アフリカが遠いので)。アフリカで子供たちが食べているコーンを作って食べてみる。→これが海を越えてアフリカで・・でも、外から人が来るのも大変(接待)。だから、何かやることがあって行ければ・・
-現地の首脳との接点:まだなし。目的orientedで箱をつくっていきたい。
4.For Two
-Basic Needsを満たすためのFor Two。水はVolvic。食べ物はTFT。後は電気、医療、教育。UnbalancedをBalanceにしていく方向へ。Ex.日本は本がたくさんある。PCをつけっぱなし→このSavingを移転できないか。
-日本の中でのアンバランスに目をむけるような仕組みを。【家族旅行にいける家族・いけない家族】【自殺者が増えている日本への取り組み等】
-自分にとってもいいこと【利己的なこと】→利他的なことにつながる(日々の生活に落して)→同じ視点で他にも応用できないか。
講評:
Basic Needsはすごい!誰でも使うものなのでアクセスが多い。
アフリカの方でもはじめのジャンプを助けるというコンセプト。
わかりやすくて、むこうもはいりやすいし、Scalable。すごい!
5.Next 小暮さん
-どこから何がNext 小暮さんなのか。起業したから?今日CPにくるのも一つのアクション。
-大地君が一歩踏み出せないことの分析。
-小暮さんが素晴らしい点。
→キャリアをきちんと積んでいる
→チェンジが大事。でも、今だと片道切符。でも、TFTはビジネスをちゃんとやっている人たちがやっているのでスキルアップにつながる
-人で足りないからできていないことも多々あり。やる気のある人たちと接点をつくるにはどうしたらいいか。→企業が優秀な人材を無償でレンタルする。(あっせん会社をつくるか?)チャレンジの機会が増えるか?!戻ってくる人たちが活躍すればその後のNPOへのreputation拡大。(お金の流れだけでなく人の流れを!)
講評:
1年勤めたインターンを泣く泣く手放した事例あり(経験としてカウントされない)。また、お金がないので人は送ってもらえるとありがたい(企業に相談中。ただ、ハイペースで仕事するので優秀な人がほしいというニーズにはなかなかマッチせず)。→共通言語を話せる人を増やす。アメリカのマッキンゼーにはそういう制度あり。